- 処方制限のある薬(向精神薬、睡眠薬、麻薬)と湿布薬は、リフィル処方箋の対象になりません。
- リフィル処方箋は、1枚の処方箋で最大3回まで薬局で処方を受けられます。
- 分割調剤は、長期処方を何度かに分割して薬局で受け取ることができますが、処方箋が複数必要です。
リフィル処方箋ってなに?
リフィル処方箋というのは、2022年4月から開始された制度です。国が強力にプッシュして導入した経緯があり、国としてはこれを広く普及させたいことを明言しています。
リフィル処方箋の要点をまとめると、こんな感じになります。
- 1枚の処方箋で、最大3回まで、薬局で処方を受けられる
- 処方制限のある薬(向精神薬、睡眠薬、麻薬、発売してから1年未満の新薬)と、湿布は対象外
- つまり高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病の薬が主になる
- 長期処方が可能なくらい、状態が安定していることが前提条件
処方箋を反復できるのは最大3回までで、1回あたりの投薬期間と、総投薬期間は、医師が医学的に適切と判断した期間と決められています。
リフィル処方箋を受け取ったら、薬局で反復利用することができますが、無条件で受け取れるわけではありません。最初に受け取った薬の日数分から、薬が無くなると想定される時期(=次回調剤予定日)が決められ、そこから大きくずれない時期(次回調剤予定日から前後1週間)である必要があります。
2回目以降の薬を受け取る際は、薬剤師による服薬状況・健康状態・体調変化がチェックされ、特に問題がなければ処方を受けることができます。服薬状況があまり良くない、体調に変化がある、などの場合は、薬剤師から病院を再診するよう言われたり、処方元の医師に情報提供されることになります。
薬を受け取る薬局は同じである必要はなく、2回目以降を違う薬局で受け取ることもできます。
分割調剤ってなに?
分割調剤というのは(実は)以前からあった制度ですが、2016年4月から扱いが変わりました。
個人のクリニック(開業医)では、1ヵ月程度の処方で再診予約が取られることが多いですが、総合病院では3ヵ月程度の長期処方が普通に行われています。
この「3か月分の処方」というのが、人や薬によっては、困ったことになる場合があります。
- 患者さん本人が、3ヵ月分の大量の薬を管理するのが難しい
- 保存方法が大変で、3ヵ月先まで一般家庭での保存が難しい
- ジェネリック(後発)医薬品を初めて使う場合、いきなり長期間の分をもらって大丈夫か不安な場合
……などのケースです。
2016年以前は、薬剤師さんの判断で、分割調剤が行われていました。2016年4月以降は、処方する医師の判断で、分割調剤の指示が出せるように改定されています。
分割調剤を導入した国の狙いは、以下のようなものでした。
- 薬の使用による体調の変化、アクシデントなどに早く気付くことができる
- 定期的に薬剤師による服薬指導があり、飲み違いや飲み忘れを防ぐことができる
- それによって、薬の適正使用が増え、無駄な薬を減らすことができ、医療費削減につながる
厳密には医師主導の分割調剤と、薬局判断での分割調剤とで処方箋の扱い・処方した医師への報告義務の有無・薬剤管理料などの扱いが違ってきますが、共通して言えることとして、『手続きが面倒』という問題点がありました。
また処方する医師の立場からすると、そもそも状態が安定しているとは言えない場合や、薬を調整して経過をみたい患者さんの場合、わざわざ長期処方を分割調剤する必要はなく、その経過を診察して確かめたいという心理が働きます。(私の周囲でも、わざわざ分割調剤を指示している医師は見たことがありません)
そのため分割調剤は普及しませんでした。(制度としては2022年9月現在も残っています)
リフィル処方のメリット・デメリット
分割調剤が普及しなかったことから、より手続きを簡素化し、利便性を高めた処方箋の制度を作ろうということで、政府が推し進めて2022年4月から開始されたのが、リフィル処方箋です。
これが施行されるにあたり、以下のようなメリットとデメリットが存在すると言われています。
- 毎回受診する必要がないため、患者側からすれば楽であり負担が減る
- 長期処方と比べて薬剤師の介入する機会が増し、薬剤管理の安全性が向上する
- 受診回数が減ることで、病院の業務軽減や、国全体としての医療費の削減が期待できる
- 薬局側からすれば、次回の来局予想が立てやすく、在庫管理がしやすい
- 服薬期間中に薬局から連絡を取ることで、服薬状況を管理しやすくなり、飲み忘れや飲み間違いを防ぎやすくなる
- 毎回受診しないため、状態や経過の把握ができず、発見や対処が遅れる可能性がある
- 長期処方と比べて薬局に行く回数が増え、負担が増える
- 医師患者関係(信頼関係)の希薄化が懸念される
- 薬歴記載などの作業が増え、薬局の負担が増える
- 患者自身がリフィル処方箋を管理する必要があり、紛失や期限切れなどの心配がある
普及率や使用実績は?
2022年4月から、リフィル処方箋が導入されました。2022年8月に、医師を対象としたリフィル処方箋の使用実績に対するwebアンケートが行われていますが、使用実績は1割にも満たない状況のようです。
リフィル処方箋を発行する理由、しない理由は、それぞれ上に挙げた長所短所がそのまま反映されているようでした。
国としてはリフィル処方箋を推し進めたいため、今後はリフィル処方箋を発行することにより、何かしらのインセンティブ(利点や報酬)が与えられることになるかもしれません。(2022年9月現在では、リフィル処方箋を発行することによる病院側の特別報酬などの要素はほとんどありません)
逆に、積極的導入を図らない医療機関に対して、何かしらのペナルティが設けられる可能性も、今後無いとはいえません。
いずれにせよ、政府の基本指針となる『経済財政運営と改革の基本方針2022』(骨太の方針2022)にも、”リフィル処方箋の普及・定着のための仕組みの整備を実現する”と明言されていますので、今後の制度改変が注目されます。
……私個人の感想を最後に述べると、総合病院の勤務医には現状ほとんど影響がないように考えています。
一般に、大学病院や地域中核病院などの総合病院の場合、安定している外来の方には、90日長期処方が根付いています。逆に、開業しているクリニックでは、30日程度での再診予約が取られることが多くなっています。今回のリフィル処方にあたり、現時点で影響を受けやすいのはクリニックであり、総合病院では体制に変化がありません。
当院でも処方箋はリフィル処方箋に対応できるよう書式が変更されていますが、実際に発行された事例は、ほぼありません。
今後、診療報酬改定によって、リフィル処方にまつわるインセンティブやペナルディが変更された場合には、何かしらの動きは出てくるのかもしれません。
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