- 公的施設が4種類(特養、老健、介護医療院、ケアハウス)
- 民間施設が4種類(介護付き、住宅型、サ高住、グループホーム)
- 介護度(ADL)、認知機能、経済力などによって、それぞれの適応が分かれます。
老人ホームって?
高齢者が入所する施設を、まとめて『老人ホーム』と呼びます。(1963年:老人福祉法)
行政の運営する公的施設が4種類、企業が運営する施設が4種類あり、それぞれ特徴があります。
介護が必要かどうか、認知症で入所可能かどうか、医療ケアに対応できるかどうか、などの違いがあります。
老人ホームの種類(8つ)
金額面でも、かなりの差が出てきます。
非常に大味ですが、一覧で比較すると、だいたいこんな感じになります。
公的施設
行政が管理運営する施設です。
国からの助成金や税金の優遇があるため、利用料は民間施設よりも安く、入居一時金もほぼ不要です。
そのため、要介護度が高く、人的・経済的・環境的・社会的に在宅生活が困難な方を、優先的に受け入れる傾向があります。
通常、希望者がものすごく多いため、入所までの道のりが困難となる場合があります。
特別養護老人ホーム(特養)、介護老人保健施設(老健)、介護医療院(介護療養型医療施設)、ケアハウスが該当します。
民間施設
企業により営利運営されている施設です。
運営(事業者)により高級志向であったり、低予算型であったり、それぞれの特色(ウリ)が違います。
入居条件も施設ごとにまちまちで、自立~要介護まで、経済力とニーズに合わせて幅広い選択が可能です。
行政の補助に乏しく、利用料は公的施設より高く、入居一時金が必要になります。
経済的負担は大きくなりますが、条件を満たせれば入居待ちは少なく、速やかに入所が可能なケースが多いです。
介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームが該当します。
それぞれの老人ホームの特徴
8種類の施設それぞれに特徴があり、入居に適した条件があります。1つずつ見ていきましょう。
特別養護老人ホーム(特養)
公的施設です。
介護保険施設のひとつで、入居には一部例外を除き、『65歳以上、要介護3以上』が必要です。
介護保険による、低価格での高度な介護サービスを受けることができます。
入居一時金も不要で、ベッドなど家具も施設備品があり、入居者の負担はありません。
看取りまで対応が可能で、長期入所を前提とした、『終の棲家』としての位置付けになります。
そのため入居希望者が殺到しており、待機期間が年にわたることも珍しくありません。
24時間の介護サービスを受けられますが、看護師の常在義務は日中のみのところが多いです。
医師の配置は義務ですが、非常勤で可となっています。
そのため、病院レベルの高度な医療ケアが必要な場合、入居が難しいことがあります。(この場合は、後述の介護医療院が候補として挙がります)
3ヵ月を超える入院、暴力行為があり安全な生活が送れない、などの場合は退去となるケースがあります。
介護老人保健施設(老健)
公的施設です。
介護保険施設のひとつで、入居には一部例外を除き、『65歳以上、要介護1以上』が必要です。
退院後すぐに在宅生活へ復帰できない高齢者が、リハビリで数か月程度の滞在を目的とした施設です。
介護保険による、低価格での高度な介護サービスを受けることができます。
入居一時金も不要ですが、特養のように住居の位置付けではないため、基本的に居室や生活設備は共用です。
特養のように個室がメインではなく、多床室が主となります。
在宅復帰への支援、機能回復が目的のため、入所期間は3~6か月です。永住の地ではありません。
リハビリ専門職が常勤しているのが特徴です。
病院から退院したばかりの方が多く、特養よりも医師看護師が手厚く(多く)配置されています。
喀痰吸引、インスリン注射、経管栄養など、医療ケアにも対応可能なことが多いですが、夜間も対応可能かどうかは施設によります。
医師は常勤で配置することが義務付けられています。そのため施設内で処方を受けられます。
ただし薬代が施設側の持ち出し(負担)になるため、高価な薬剤を継続使用している場合は、対応不可能な場合があります。
短期間だけ老健に入所して、本入所と同じサービスを受けることを、ショートステイをいいます。
サービス内容は本入所の方と変わらず、リハビリ・介護・看護を同様に受けることができます。
在宅介護の方が老健に通って、選任のリハビリスタッフ(PT/OT/ST)から機能訓練を受けることをいいます。
入所とは異なり、通所リハビリであれば要支援1以上で構いません。(=介護認定を受けていることが条件)
介護医療院(介護療養型医療施設)
公的施設です。
介護保険施設のひとつで、入居には一部例外を除き、『65歳以上、要介護1以上』が必要です。
介護療養型医療施設(療養病床)というのが従来の制度で、これは2023年に廃止されます。
その後継が介護医療院となります。
- 介護療養型医療施設(療養病床)は、病院の位置付け。医療による「入院」と定義。2023年廃止。
- 介護医療院は、生活施設の位置付け。介護と医療による「住居」と定義。2018年創設。
医療設備が置かれているのが特徴で、高度な医療ケアにも対応できます。
元々が療養病床(=病院)であったというケースが多いのが現状です。
長期療養を前提とした生活の場、『終の棲家』としての位置付けになります。
特養よりも高度な医療ケアを必要とする要介護者が対象となります。その分、レクリエーションなどは乏しくなります。
Ⅰ型とⅡ型があり、Ⅰ型の方が高度な医療体制をもちます。
入居一時金は不要ですが、基本的な介護サービスと別に追加のサービスを受けると、料金が加算されます。また食費や居住費もかかるため、他の公的施設と比べると比較的割高となりがちです。
医師の配置も義務付いており、看取りまで対応が可能です。
ケアハウス
公的施設です。
軽費老人ホームともいいます。比較的、介護度の低い方が入居する施設です。
一般型(自立型)と、介護型の2種類があります。
60歳以上が対象です。
入居に介護認定は不要で、自立の方でも入居できます。
掃除洗濯や食事といった生活支援サービスが主で、介護サービスは常設されていません。
介護サービスの利用には、デイサービスや訪問介護など、外部サービスを利用します。
公的施設ですが、所得や資産に関する入居の制限はありません。
入居には、『65歳以上、要介護1以上』が条件となります。
介護保険法による『特定施設入居者生活介護』の指定を受けた”特定施設”に該当するため、一般型の生活支援に加えて、介護サービスが提供されます。
介護度が上がっても医療依存度が低ければ、看取りまで対応可能なところもあります。
一般型は介護スタッフ不在、介護型は介護スタッフが常勤です。
いずれの型にも、医療者の配置義務はありません。
基本的に多床室はなく、夫婦での同室入居などを除き、基本的に入居者は全員個室です。
レクリエーションは多彩ですが、老健や特養のような時間管理ではなく、生活上の自由度は高いです。
公的施設ではありますが、一部例外を除き、入居時に保証金(入居一時金)が必要となります。
介護型の方が手厚いですが、数が少なく、入居の敷居はかなり高い状況にあります。
介護付き有料老人ホーム
民間施設です。
行政から『特定施設入居者生活介護』の指定を受けた特定施設で、介護保険サービスを毎月定額で利用することができます。(月額利用料に介護サービスの自己負担額が定額で含まれており、介護サービスの利用料によらず介護費用は定額です)
介護保険を利用するため、一部例外を除き、『65歳以上』が原則となります。
介護型は要介護1以上、混合型・自立型は介護認定が不要です。
原則として終身利用が可能で、入居条件を満たせば認知症であっても受け入れ可のことが多いです。
企業による運営であり、様々な特色を付けられていることが多いです。都市部などサービスの手厚い施設は、いわゆる『高級老人ホーム』と位置付けられることもあります。
医療職の24時間配置は義務ではありませんが、『協力医療機関』を定め、協力体制を整えることが義務化されています。
サービス内容・入居条件・医療ケア体制は施設によりまちまちですが、いずれも高額となりがちです。経済的に対応可能であれば、非常に手厚い介護と生活支援が終身で受けられます。
また、高額の入居一時金が必要となる場合が多いです。
住宅型有料老人ホーム
民間施設です。
特定施設ではなく、介護サービスは入居生活に含まれておらず、個々人で自由に外部サービスを組み合わせて利用することになります。そのため介護保険の支給上限額を超えると、その分は10割負担となります。
ケアマネの所属する居宅介護支援事業所などを、施設と併設しているところを多くあります。
生活支援やレクリエーション、イベントが主体で、自立~軽度要介護の『60歳以上』が対象です。
看護職員の配置義務はなく、医療ケア提供の義務付けもありません。
医療に関する規定がなく、嘱託医や協力医療機関をもたない施設も存在します。
入居一時金は介護付きよりも少ない場合が多いですが、介護費に関しては外部事業者に依頼することになるため、施設が請求する月額利用料に含まれません。
介護サービスを外部に依頼する場合は、施設への月額利用料に加えて、介護費用が別に必要となります。(在宅で訪問介護やデイサービスを利用するのと同様、介護度と地域によって介護保険の適用上限額が決まっています)
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
民間施設です。
60歳以上、もしくは60歳未満で要介護1以上が対象です。
正確には施設ではなく、住宅の扱いです。(管轄が厚生労働省ではなく、国土交通省です)
バリアフリー完備の、高齢者の”賃貸住宅”という認識です。
安否確認サービス(介護職員が定期的に巡回)と、生活相談サービス(買物代行や病院付き添いなど)の生活支援を受けることができます。
外出外泊などの生活自由度は高いですが、認知症の対応は困難と判断される場合があります。
入居にあたり、通常の賃貸住宅と同じく、連帯保証人・身元保証人(不在の場合は後見人)が必要となります。
一般型と介護型の2種類があります。
介護や医療のサービスは不随しておらず、安否確認と生活相談などの生活支援サービスが主となります。
賃貸住宅の扱いであり、入居に介護認定は必要ありません。
介護が必要となった場合は、外部の事業者に依頼することになります。
特定施設入居者生活介護の指定を受けている、特定施設の扱いです。
そのため、施設内で介護サービスを月定額で受けることができます。
施設の数が少ないため、入居難易度は高いです。
医療者の配置が義務ではないため、医療ケアの必要度が高い方は入居困難となりがちです。
賃貸住宅としての契約になるため、初期費用として敷金(介護型の場合は入居一時金)が必要です。
あくまでも住宅としての契約であり、建物賃貸借契約を結んで居住することになります。
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)
民間施設です。
認知症の診断を受けた方が、共同生活を送るための施設です。
自宅に近い環境で、馴染みの人たちと、スタッフの支援を受けながら共に暮らし、認知症対策とする目的があります。
生活を入居者同士で補いながら行うため、基本的には生活支援のサービスを施設スタッフ主導では行いません。
65歳以上、要支援2以上、認知症の診断があることが入居条件です。
また、介護保険の地域密着サービスに属しているため、原則として施設がある市区町村に住民票がある人が対象となります。
入居期間はとくに決められておらず、施設によって異なります。終身利用が可能な施設も存在しますが、精神的に不安定、共同生活が困難、長期入院をする、などの場合は退去となる場合があります。
看護師の配置義務はなく、医療ケアの対応が難しいところが多いです。
法制度上は看取りまで対応可となっていますが、現実的にはそこまで対応可能な施設は希少です。
入居一時金が必要です。
また日常生活費は介護保険適用外のため、自己負担となります。
施設選びで検討すべきポイント
入居者の健康状態、認知機能、経済状況など、検討すべきポイントは多数あります。
施設により様々な特徴があり、例外となるところは当然ありますが、大きく分けると以下のようになります。
認知症でも入居が可能な施設
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護付き有料老人ホーム
- グループホーム
上記3つは、認知症の方に向いた施設であるといえます。
他種でも、施設ごとに基準を設けていて、対応が可能なところもあります。
看取りが可能な施設
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護付き有料老人ホーム
- 介護医療院(介護療養型医療施設)
上記3つは、介護度が高く医療ケアが必要となっても、対応可能であるところが多いといえます。
法制度上は、8種類の老人ホームのいずれであっても、状況が整っていれば看取りまで対応可とされています。(2009年、介護保険法改正)
ただし現実的には、上記3つ以外での看取り対応は、なかなか難しいところが多いという印象です。
特定施設であるかどうか
- 介護型ケアハウス
- 介護付き有料老人ホーム
- 介護型サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
都道府県から『特定施設入居者生活介護』の指定を受けた介護施設が、特定施設と呼ばれます。
これらは月額利用料のなかに介護サービスの自己負担額が定額で含まれており、介護サービスの利用料に関わらず、介護費用は一定(=月額利用料の一部)となります。
医療体制の手厚さ
- 介護医療院
- 介護老人保健施設
- 特別養護老人ホーム
- 介護付き有料老人ホーム
これらは医療職が配置されており、医療ケアが必要となっても対応可能なことが多いです。
介護医療院はもともと療養病床(≒病院)であったところが多く、高度な医療ケアに対応できます。
介護老人保健施設は、病院から退院した方が在宅生活までの中継として利用する場合が多く、退院直後のケアの意味もあり医療体制が手厚くなっています。しかし長期入所前提ではなく、あくまでも在宅に向けての訓練の場であり、住居としての位置付けではありません。
各施設間の違いと比較
違いが分かりづらいところを、ピックアップして書いていきます。
特養 vs 老健 vs 介護付き
- 終の棲家であり、長期入所が前提。
- 65歳以上、要介護3以上。
- 生活の質(レクリエーションなど)を重視。
- 在宅復帰が目標であり、3~6か月の限定入所。
- 65歳以上、要介護1以上。
- 機能回復(リハビリテーション)を重視。
- 終の棲家であり、長期入所が前提。
- 65歳以上、要介護1以上(介護型)
- 施設により重視する点が様々
介護付き vs 住宅型 vs サ高住(一般型)
- 65歳以上、要介護1以上(介護型)
- 特定施設
- 介護サービスは施設の標準サービスとして備わっており、別途外部に依頼する必要はない
- 月額利用料に含まれており、別料金は不要
- 介護度が上がっても継続可能なことが多い
- 認知症は対応可能なところが多い
- 利用権方式
- 60歳以上、介護認定は不要
- 特定施設ではない
- 介護サービスを利用する場合は、別途外部に依頼する必要がある
- 外部の介護サービスを利用した分だけ、別料金が必要
- 介護度が上がると入居困難となる場合がある
- 認知症が対応可能かどうかは施設による
- 利用権方式
- 60歳以上で介護認定不問 or 60歳未満で要介護1以上
- 特定施設ではない(※介護型サ高住は特定施設)
- 介護サービスを利用する場合は、別途外部に依頼する必要がある(※介護型サ高住は除く)
- 要介護度が低くても入居しやすい傾向がある
- 介護度が上がると、対応困難となる場合がある(※介護型サ高住は除く)
- 認知症は基本的に対応困難
- 賃貸借方式
- 国土交通省管轄であり、『高齢者住まい法』により、入居者の同意のない一方的な契約解除が禁じられている
介護保険って?
介護保険の恩恵を受けられる方(=介護保険制度における被保険者)は、以下の2通りです。
- 65歳以上、かつ介護認定あり(要支援1以上)⇒(第1号被保険者)
- 40~64歳、かつ厚労省の定める16種の特定疾病が原因で要介護状態となった⇒(第2号被保険者)
原則として、65歳以上で介護認定を受けた方であれば、適応となります。
介護保険における特定疾患は、厚生労働省が定めている16種類の疾病群を指します。
介護保険の利用のしかた
年齢や状態とともに自然に備わる制度ではないため、申請が必要です。
介護保険の申請を行う
住民票のある市町村の介護保険担当窓口で受付を行います。
御自分や親族での申請が難しい場合は、地域包括支援センター・介護保険施設・居宅介護支援事業者などによる代行申請も可能です。
介護認定調査を受ける
自宅、施設、病院など御本人の滞在場所に市町村の認定調査員が訪問し、介護認定調査が行われます。
介護認定審査会による判定を待つ
介護認定調査に基づく一次判定結果と、主治医意見書をもとに、申請者の要介護度が審査・判定されます。
認定審査委員会のメンバーは、市町村長から任命された医療・介護・社会福祉などの実務経験者から構成されています。
- よく勘違いされるところですが、介護認定は、主治医が行うものではありません。
- 主治医はの仕事は、あくまでも『主治医意見書』を作成するところまでで、認定の審査決定には関与していません(できません)。
- かかりつけ医がなく主治医意見書を依頼する医師の心当たりがない場合は、市町村の指定する医師の診断を受ける必要があります。
ケアマネージャを決定する
ケアマネージャが利用者・家族と相談し、ケアプラン(介護サービス利用計画書)を作成して、市町村に提出します。
よくわからない!書類も制度も多すぎ!
過去に介護の経験がある、周囲で見聞きする機会があった、仕事で関与している……などの場合を除き、正直なところ制度と種類が複雑すぎて、パニックになりがちです。
まず、何をどうすればよいのか、わからない!
どこから手を付ければよいのか、さっぱり!
という場合は、
訪問介護・通所介護のお役立ち情報や各種書式等の情報が多数記載されている「けあタスケル」様など、
情報が系統立てて整理してあり、御自身や御家族の状況に合わせて必要な情報を取得できるような、インターネットサイトや書籍を参考にされるとよいと思います。
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