【抗血栓薬】脳梗塞でつかう抗血小板薬・抗凝固薬いろいろ。慣れないと紛らわしいので簡潔に!

Point
  • 脳神経外科領域でよく使うもの、をピックアップしました。
  • ラクナ梗塞】アスピリン、シロスタゾール、クロピドグレル、オザグレル
  • アテローム血栓性脳梗塞】アスピリン、シロスタゾール、クロピドグレル、プラスグレル、アルガトロバン
  • 心原性脳塞栓症】ワルファリン、DOAC(ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン)、ヘパリン
目次

抗血小板薬 anti platelet drugs

主に、動脈系に対する抗血栓作用をもちます。(白色血栓に有効)

脳卒中の中では、ラクナ梗塞と、アテローム血栓性脳梗塞に対して有効です。

中和剤はなく、効果が切れるのを時間経過で待つしかありません。

アスピリン aspirin

一般的な情報

  • バファリン、バイアスピリン、ゼンアスピリン
  • 錠剤
  • 消化管潰瘍、気管支喘息には要注意
  • 1日1回、1回1錠が基本(100mg/日)
  • 後発品あり
  • 5.7円/錠(後発品標準用量:5.7円/日)

マニアックな情報

  • アセチルサリチル酸
  • シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害薬
  • 解熱鎮痛作用もある
  • 歴史のある古い薬
  • だけどまだまだ現役

シロスタゾール cilostazol

一般的な情報

  • プレタール
  • 錠剤、OD錠、散剤、ゼリー
  • 1日2回、1回1錠が基本(200mg/日)
  • 後発品あり
  • 17.2円/錠(後発品標準用量:34.4円/日)

マニアックな情報

  • ホスホジエステラーゼ(PDE3)阻害薬
  • 血管拡張作用もある
  • 他の抗血小板薬と比べると、出血のリスクが少ないという報告

チクロピジン ticlopidine

一般的な情報

  • パナルジン
  • 錠剤、散剤
  • 1日2回、1回1錠が基本(200mg/日)
  • 後発品あり
  • 5.9円/錠(後発品標準用量:11.8円/日)

マニアックな情報

  • チエノピリジン系抗血小板薬(ADP受容体拮抗薬)
  • 古い薬
  • 上位互換のクロピドグレル、プラスグレルが登場しており、新規で処方することはほぼ無くなった

クロピドグレル clopidogrel

一般的な情報

  • プラビックス
  • 錠剤
  • 1日1回、1回1錠が基本(75mg/日)
  • 後発品あり
  • 26円/錠(後発品標準用量:26円/日)

マニアックな情報

  • チエノピリジン系抗血小板薬(ADP受容体拮抗薬)
  • 抗血小板薬の主要薬の一つ
  • 不応症という”効きにくい体質”の人がいることが分かっている
  • チクロピジンの上位互換という理解でよい

プラスグレル prasugrel

一般的な情報

  • エフィエント
  • 錠剤、OD錠
  • 1日1回、1回1錠が基本(3.75mg/日)
  • 後発品なし
  • 268円/錠(標準用量:268円/日)

マニアックな情報

  • チエノピリジン系抗血小板薬(ADP受容体拮抗薬)
  • 抗血小板薬の主要薬の一つ
  • クロピドグレルでみられた”不応症”の人にも有効といわれる
  • チクロピジンの上位互換という理解でよい
  • 循環器領域で先行して使われていたが、脳梗塞も適応となった

オザグレルナトリウム ozagrel sodium

一般的な情報

  • キサンボン、カタクロット
  • 注射
  • 1日2回、1回80mgが基本(160mg/日)
  • 後発品あり
  • 704円/80mg/瓶(標準用量:1,408円/日)

マニアックな情報

  • トロンボキサン合成酵素阻害薬
  • トロンボキサンA2(TXA2)は血小板の凝集を促進するため、TXA2の合成を抑えることで、抗血小板作用を発揮する

抗凝固薬 anti coagulant drugs

主に、静脈系に対する抗血栓作用をもちます。(赤色血栓に有効)

心原性脳塞栓症、下肢静脈血栓症(および、そこから派生する肺塞栓症や奇異性脳塞栓症)に対して有効です。

アルガトロバン以外には、中和剤が存在します。

ワルファリン warfarin

一般的な情報

  • ワーファリン
  • 錠剤、顆粒、細粒
  • 1日1回が基本(用量は人によりかなり差がある)
  • 後発品あり
  • 9.8円/錠(後発品標準用量:9.8~40円/日)
  • 中和薬はケイセントラ、ケイツー

マニアックな情報

  • ビタミンKが関与する血液凝固因子(Ⅱ,Ⅶ,Ⅸ,Ⅹ因子)の阻害薬
  • 定期的に採血(PT-INR)での効果チェックが必須
  • 古い薬だが、DOACが使えない人には使われる場合がある
  • 機械弁置換術後は、DOACではなくワルファリンが必要になる
  • 納豆、青汁、クロレラ禁止

ダビガトラン dabigatran

一般的な情報

  • プラザキサ
  • カプセル
  • 1日2回が基本(220 or 300mg/日)
  • 後発品なし
  • 134.7 or 237.3円/錠(標準用量:474.6 or 538.8円/日)
  • 中和薬はプリズバインド

マニアックな情報

  • トロンビン(IIa因子)阻害薬
  • DOACの1つ
  • 脱カプセルできない
  • DVTの適応なし
  • 腎排泄85%
  • 納豆、青汁、クロレラOK
  • 腎機能(CCr)で用量変化

プラザキサを脱カプセルして経管投与すると、通常投与と比較してAUC(血中濃度時間曲線下面積=血中曝露量)が約1.75倍高いという報告があります。(想定よりも強く効きすぎる)

リバーロキサバン rivaroxaban

一般的な情報

  • イグザレルト
  • 錠剤、OD錠、散剤、ドライシロップ
  • 1日1回、1回1錠が基本(10 or 15mg/日)
  • 後発品なし
  • 362.7 or 504円/錠(標準用量:362.7 or 504円/日)
  • 中和薬はオンデキサ

マニアックな情報

  • FXa阻害薬
  • DOACの1つ
  • DVTの適応あり
  • 腎排泄66%
  • 納豆、青汁、クロレラOK
  • 腎機能(CCr)で用量変化

アピキサバン apixaban

一般的な情報

  • エリキュース
  • 錠剤
  • 1日2回、1回1錠が基本(5 or 10mg/日)
  • 後発品なし
  • 125.6 or 227.5円/錠(標準用量:251.2 or 453円/日)
  • 中和薬はオンデキサ

マニアックな情報

  • FXa阻害薬
  • DOACの1つ
  • DVTの適応あり
  • 腎排泄27%
  • 納豆、青汁、クロレラOK
  • SCr、体重、年齢で用量変化

エドキサバン edoxaban

一般的な情報

  • リクシアナ
  • 錠剤、OD錠
  • 1日1回、1回1錠が基本(30 or 60mg/日)
  • 後発品なし
  • 411.3 or 416.8円/錠(標準用量:411.3 or 416.8円/日)
  • 中和薬はオンデキサ

マニアックな情報

  • FXa阻害薬
  • DOACの1つ
  • DVTの適応あり
  • 腎排泄50%
  • 納豆、青汁、クロレラOK
  • 体重(+腎機能)で用量変化

30mgと60mgでほとんど値段が同じ!(リクシアナはもともとDVTの薬として先に適応が通っていたため……という背景がありました)

ヘパリンナトリウム heparin sodium

一般的な情報

  • ヘパリン
  • 注射
  • 後発品あり
  • 35.4円/1,000単位
  • 中和薬はプロタミン

マニアックな情報

  • アンチトロンビンと結合して抗凝固活性が数千倍に高め、これがXa因子、トロンビン(IIa因子)を阻害し、抗凝固活性を発揮する
  • APTTやACTでの効果チェックが必要

アルガトロバン argatroban

一般的な情報

  • スロンノン、ノバスタン
  • 注射
  • 後発品あり
  • 685円/筒
  • 中和薬なし

マニアックな情報

  • 選択的抗トロンビン薬
  • APTTに反映される
  • 脳梗塞急性期に型通りの使い方をする(通常7日間)

理屈の上では、アルガトロバンも心原性脳塞栓症に有効と思われますが、保険適応上は心原性脳塞栓症に使用できません。(出血性梗塞に対するエビデンスがない、という理由から)

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この記事を書いた人

地方中核病院の勤務医です。脳神経外科専門医を取得して十年ほど経過しました。
脳卒中や頭部外傷など、脳神経外科領域の一般的診療を主に行っています。

病状説明や学生講義で、どう話したら分かってもらえるかに苦心することが多く、「むずかしいことを、むずかしい言葉で説明しない」ことを目標にして書いています。

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