脳梗塞にかかわる分類・スコア

脳梗塞にかかわる分類を記載しています。

目次

ABCD2スコア

AAge60歳以上1点
BBlood pressuresBP 140mmHg以上 and/or dBP 90mmHg以上1点
CClinical feature片麻痺
麻痺のない言語障害
2点
1点
DDuration10分~59分
60分以上
1点
2点
D2Diabetesあり1点

Johnstonら : Lancet 369 : 283, 2007

  • TIAを起こした後の、脳梗塞発症リスクを評価するスコアです。
  • 「えーびーしーでぃーすくえあすこあ」と読みます。
  • 点数が高いほど、TIA後2~90日間の脳梗塞発症リスクが高くなると言われています。
  • TIAは脳梗塞へ移行する可能性が高い病態ですが、迅速な診断と治療開始により、脳梗塞の発症率を減らせることが明らかとなっています。

Rothwellら : Lancet 370 : 1432, 2007

更に項目が増えた、ABCD3スコア(ABCD2+1週間以内の複数回のTIA)や、ABCD3-Iスコア(ABCD3+50%以上の頚動脈狭窄およびDWI新規病変)、というものもあります。

CHADS2スコア

C心不全1点
H高血圧症1点
A年齢75歳以上1点
D糖尿病1点
S脳梗塞、TIAの既往2点

Gageら : JAMA285 : 2864, 2001

  • 心房細動による、脳梗塞の発症リスクを評価するためのスコアです。
  • 「ちゃずつーすこあ」と読みます。
  • このスコアが0点から6点になると、脳卒中のリスクは約9倍に上昇します。1点以上あれば、抗凝固療法が推奨されています。

2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン

更に項目を増やして精度を上げた、CHA2DS2-VAScスコアというものも存在します。

NIH Stroke Scale (NIHSS)

1a. 意識水準0:完全覚醒  1:簡単な刺激で覚醒
2:繰り返し刺激、強い刺激で覚醒  3:完全に無反応
1b. 意識障害-質問
(今月の月名、年齢)
0:両方正解  1:片方正解  2:両方不正解
1c. 意識障害-従命
(開閉目、手を握る開く)
0:両方可  1:片方可  2:両方不可
2. 最良の注視0:正常  1:部分的注視麻痺  2:完全注視麻痺
3. 視野0:視野欠損なし  1:部分的半盲
2:完全半盲  3:両側性半盲
4. 顔面麻痺0:正常  1:軽度の麻痺
2:部分的麻痺  3:完全麻痺
5. 上肢の運動(左)
*仰臥位のときは45度
N:切断、関節癒合
0:90度*を10秒間保持可能(下垂なし)
1:90度*を保持できるが、10秒以内に下垂
2:90度*の挙上または保持ができない
3:重力に抗して動かない
4:全く動きがみられない
 上肢の運動(右)
*仰臥位のときは45度
N:切断、関節癒合
0:90度*を10秒間保持可能(下垂なし)
1:90度*を保持できるが、10秒以内に下垂
2:90度*の挙上または保持ができない
3:重力に抗して動かない
4:全く動きがみられない
6. 下肢の運動(左)
N:切断、関節癒合
0:30度を5秒間保持できる(下垂なし)
1:30度を保持できるが、5秒以内に下垂
2:重力に抗して動きがみられる
3:重力に抗して動かない
4:全く動きがみられない
 下肢の運動(右)
N:切断、関節癒合
0:30度を5秒間保持できる(下垂なし)
1:30度を保持できるが、5秒以内に下垂
2:重力に抗して動きがみられる
3:重力に抗して動かない
4:全く動きがみられない
7. 運動失調0:なし  1:1肢  2:2肢
8. 感覚0:障害なし  1:軽度から中等度  2:重度から完全
9. 最良の言語0:失語なし  1:軽度から中等度
2:重度の失語  3:無言、全失語
10. 構音障害
N:挿管、身体的障壁
0:正常  1:軽度から中等度  2:重度
11. 消去現症と注意障害0:異常なし
1:視覚、触覚、聴覚、視空間、または自己身体に対する不注意、あるいは1つの感覚様式で2点同時刺激に対する消去現症
2:重度の半側不注意あるいは2つ以上の感覚様式に対する半側不注意

脳卒中の神経診察で用いられます。特に脳梗塞の超急性期治療では、重要な指標になります。点数が高いほど重症と判断されます。

実施する上で、次のような注意事項があります。

  • リストの順に施行すること。
  • 逆に行ったり、評点を変更してはならない。
  • 検査の行い方や質問に、独自のアレンジを加えてはならない。
  • 患者にヒントを与えたり、何度も指示を出して答えに誘導するようなことをしてはならない。

慣れるまでは項目も多く、なかなか取っ付きにくく感じますが、所見の取り方にはコツがあります。いずれ神経診察の項目で、もう少し詳しく書く予定です。

NINDSⅢ分類

発症機序による分類血栓性
塞栓性
血行力学性
臨床カテゴリーアテローム血栓性脳梗塞
心原性脳塞栓症
ラクナ梗塞
その他の脳梗塞
部位による症候内頚動脈
中大脳動脈
前大脳動脈
椎骨脳底動脈

National Institute of Neurological Disorders and Strokes : Stroke 21 : 637, 1990 (抜粋)

米国立神経疾患・脳卒中研究所が出した脳卒中分類の、脳梗塞部分を抜粋したものです。脳梗塞を理解する上では、この分類がとても重要で、また実臨床でも、この考え方が基本になっています。

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この記事を書いた人

地方中核病院の勤務医です。脳神経外科専門医を取得して十年ほど経過しました。
脳卒中や頭部外傷など、脳神経外科領域の一般的診療を主に行っています。

病状説明や学生講義で、どう話したら分かってもらえるかに苦心することが多く、「むずかしいことを、むずかしい言葉で説明しない」ことを目標にして書いています。

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