Acute SubDural Hematoma (ASDH)
- 喋っていた人が死亡する(talk and deteriorate : T&D)
- 開頭血腫除去術
- 三日月状の血腫
- 対側損傷 (contrecoup injury)
解説
頭をつよくぶつけたことにより、頭の中で出血が起きている状態です。
急性の血腫が硬膜の下(内側)に溜まっていき、脳を圧迫します。
慢性硬膜下血腫とは違い、急激な変化なので、急変の可能性があります。
重症の場合は、緊急手術が必要です。
どんな病気?
病気ではなく、ケガ(頭部外傷)です。
急激な出血(血腫)による脳の圧迫が急速に進むため、突然の変化には脳が耐えられません。(慢性との違い)
重症の場合は、命にかかわるため、緊急手術が必要となります。
軽症の場合は、自然治癒が期待できますが、週単位の経過で慢性硬膜下血腫へ移行することもあります。
症状
- 頭痛、嘔吐(頭蓋内圧が高くなり、脳にストレスがかかるため)
- 意識障害、片麻痺、けいれん発作(脳が圧迫され、機能障害を起こすため)
- 昏睡、呼吸停止(脳ヘルニアによる生命危機)
診断
頭部CTで確定診断が可能です。三日月状の白い血腫が典型的です。
治療
- 開頭血腫除去術
急性血腫は硬く固形のため、穿頭では対応できず、開頭して取り除くしかありません。
救命目的で行う場合は、大開頭が必要になるケースが多くなります。
状況によっては、骨を戻さずに傷を閉じて終了することもあります。(減圧開頭術/外減圧術の併用)
術前の状態(重症度)によって、予後(回復度)は大きく変わってきます。(*1)
軽症例(術後に回復し退院)
重症例(術後に回復できず死亡)
医療者向け
通称:さぶどら、あきゅーとさぶどら
急激な経過をたどる(急変する)可能性があり、「喋っていた人が死亡する(=talk and deteriorate / T&D)」の代表例です。
軽症の場合は、保存的治療(点滴)で経過をみることもあります。
重症の場合は、手術までの間に脳ヘルニアからの二次性脳梗塞を回避できているかが、大きく予後を分けます。
そのため入室までの時間稼ぎとして、マンニトールを全開で投与したり、病室で穿頭して凌ぐこともあります。
重症例の手術は、大開頭が基本です。脳挫傷などの合併があり、術後に高度の脳浮腫が予想される場合は、外減圧術を併用してくる場合もあります。
状態によっては、抜管せずに帰室するケースもあります。
術後にドレーンが入ってくるのが一般的です。ドレーンのタイプは病院により様々ですが、術直後は後出血を防ぐために、陰圧をかけるのが一般的です。
抗浮腫剤(グリセオール、マンニトール)を使うかどうかは、状況によります。
もう少し詳しい解説
- 抗血栓薬(抗血小板薬、抗凝固薬)内服中の場合は、重症化しやすくなります。(*2,3)
- 抗血栓薬内服中の場合は、数日以上の経過をかけて、じわじわと悪化する場合もあります。(*4)
- 高齢者の頭部外傷は、硬膜外よりも硬膜下に血腫を生じやすいと言われています。(頭蓋骨と硬膜の癒着が高度なため)
- 頭蓋骨骨折は伴わないことの方が多く、一般に三日月型の血腫を形成します。
- 緊急開頭までは必要ない、もしくは大開頭に耐えうる全身状態ではないような場合は、血腫が亜急性期~慢性期に融解して液状化するのを待ち、局所麻酔で穿頭もしくは小開頭の血腫除去術を行う場合もあります。
- 抗浮腫剤(グリセオール、マンニトール)は、手術までの凌ぎとして使用する分には有効ですが、それ単独では根本的な治療になりません。
- 急性硬膜外血腫よりも圧倒的に予後が悪く、術前の意識レベルが悪い高齢者ほど、転帰が不良となります。(*1)
参考
- Massaroら : Acta Neurochir (Wien) 138 : 185, 1996
- Wongら : J Trauma 65 : 1303, 2008
- Oyamaら : Neurol Med Chir (Tokyo) 51 : 825, 2011
- Itshayekら : Neurosurgery 58 : 851. 2006
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