Trigeminal Neuralgia
- 世間で言うところの、「顔面神経痛」
- 顔面の感覚神経を、頭の中の何かが圧迫していることが原因
解説
片方の顔面に、数秒から2分程度の「びりっ」という電撃痛が起き、それが繰り返される病気です。
症状がつよくなると、日常生活に支障が出るほどの痛みになります。
どんな病気?
世間でよく言われるところの、「顔面神経痛」です。
顔面の片側で、鋭い痛みが出たり引っ込んだりします。
ひどくなると食事や歯磨き、会話も痛みで困難になることがあります。
顔面の感覚を司る神経(三叉神経)を、頭の中の何かが圧迫していることが原因です。(*1)
症状
- 額、頬、顎のいずれか、もしくはこれらを跨いで、片方に鋭い痛み(電撃痛)が起こります。
- 痛みは数秒~2分程度ですが、繰り返し起こります。
- 前触れなく起こりますが、痛い場所に触れると、痛みが誘発されやすいです。
- 痛みのある期間と、痛みのない期間を繰り返すこともあると言われています。
診断
- 痛みが「三叉神経痛」であるかどうかの判断は、病歴や症状の聴取(問診)が重要です。
- 痛みの感じ方、タイミング、状況、どのくらいの期間か、などを診断金純に照らして判断します。
- 三叉神経痛であると疑った場合は、頭部MRIで三叉神経の周囲を入念に観察すれば、原因が解明できることがあります。
治療
典型的な三叉神経痛に対する治療法は、①薬物治療、②ブロック治療、③放射線治療、④手術、の4通りがあります。
薬物治療
カルバマゼピン、という薬が第一選択薬です。
ブロック治療
痛みの原因となる感覚神経を、薬や熱によって遮断する方法です。ペインクリニックで行われます。
定位放射線治療
ガンマナイフ治療が保険適応となっています。
神経血管減圧術(MVD)
三叉神経痛の根治が期待できる手術です。全身麻酔が必要となります。
医療者向け
通称:さんさしんけい、ごばん
三叉神経痛単独で、生命にかかわることはありません。そのため通常は外来での対応となり、入院する場合は何かしらの治療(主に手術)が予定されている場合になります。
神経血管減圧術は全身麻酔での開頭術ですが、傷は耳の後ろに7~10cm程度で済むことが多いです。通常はドレーンも入ってきません。
ただし術中に、脳ベラで小脳を引くことになるため、めまいや嘔気などの小脳症状を術後に起こす場合があります。
術中操作の影響で、術後に耳閉感(耳に水が入ったような感覚)を訴える方もいますが、数日で改善する場合がほとんどです。
もう少し詳しい解説
- 三叉神経の第2枝(頬)、第3枝(下顎)から生じることが多く、「歯が痛い」として、はじめは歯科へ通院されている方も多くいます。
- 統計的には男女比1:2で女性に多く、50歳以降で加齢とともに発症率が増加するされています。半面、20代までの発症は少ないというデータがあります。(*3)
- 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)による診断基準を指標として用います。
- 帯状疱疹後神経痛、副鼻腔炎、齲歯(虫歯)、片頭痛などが鑑別疾患となります。
- 血管の圧迫が原因である「典型的」三叉神経痛は、顔面けいれんと同じく、神経血管圧迫症候群に属します。
- 三叉神経を圧迫する原因の多くは血管ですが、15%ほどで腫瘍や多発性硬化症が原因であるとも言われています。(*4)
- 顔面けいれんとは異なり、Root Entry Zone (REZ)よりも遠位の圧迫でも生じると言われています。
参考
- Barker IIら : N Eng J Med 334 : 1077, 1996
- Zagzoogら : J Neurosurg 7 : 1, 2018
- Katusicら : Ann Neurol 27 : 89, 1990
- Cruccuら : Neurology 87 : 220, 2016
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