MRI検査

Magnetic Resonance Imaging

Key Words
  • CTよりも多くの情報が得られる
  • 色々の撮影方法があり、用途で使い分ける
  • 一般に、ペースメーカー留置後の人は撮影できない(最近はMRI対応型もある)
目次

概要

電磁場を使い、物体を輪切り(断層)にして、中身を断面として観察することができる検査です。

白黒画像で、組織は灰色のコントラストで描かれます。

軸位断(輪切り)だけでなく、矢状断(タテ切り)、冠状断(ヨコ切り)でも画像をつくることができます。

長所

  • CTとは違い、放射線被曝がありません。
  • 骨によるアーチファクト(雑音)がなく、骨に囲まれた脳幹や脊髄を、きれいに写し出すことができます。
  • 組織の違いを細かく描き出せるため、CTよりも画質が良いです。(=分解能に優れる)
  • 色々な撮影方法や撮影方向があり、情報量が豊富です。

  • 脳梗塞の超急性期は、MRIの拡散強調画像(DWI)でしか判定できません。
  • 造影剤を使わなくても、大まかな血管の情報を得ることができます。(=MRA)
頭部単純MRIの色々な撮影方法
基本となるMRIの撮影条件です(特に異常のない正常画像です)

短所

  • 入れ歯などの金属により、画像が歪んだり、見えなくなったりします。
  • つよい磁場を生じるので、ペースメーカー植え込み術後は基本的に使用できません。

MRI対応型のペースメーカーも登場していますが、循環器内科医や臨床工学技士さんによる調整や立ち会いが必要であり、『いつでもすぐに自由に撮れる』という訳ではありません。

  • 撮影時間がCTよりも長く、安静が保てない不穏状態の方や、閉所恐怖症、小児などの場合は、鎮静が必要になることもあります。
  • 撮影前に、コイルという道具を装着して装置に入るため、20~30分ほど仰向けで、じっとしている必要があります。
  • 撮影中の騒音がかなり大きいです。

実例

画像診断の基本はCTですが、CTでは情報が足りない場合にMRIで補う必要があります。

超急性期脳梗塞の評価(DWI)

超急性期脳梗塞のCT/MRI比較

脳梗塞の超急性期は、CTで変化がありません。

超急性期の脳梗塞を画像で捉えられるのは、MRIの拡散強調画像(DWI)のみです。

血管の評価(MRA)

頭部MRAによる頭蓋内主幹血管の評価

造影剤を使わなくても、おおまかな血管の状態を写し出すことができます。

細かい血管や、血液の流れを動きとして見ることは難しいですが、おおまかな評価は可能です。

脳腫瘍

ガドリニウム造影による脳腫瘍の増強効果

脳腫瘍は造影剤で見えやすくなる(=増強される)ものが多く、病態評価や治療方針の決定に欠かせません。

軸位断、矢状断、冠状断、3Dイメージといった画像構築が可能
左から順に、軸位断(輪切り)、矢状断(タテ切り)、冠状断(ヨコ切り)、3Dイメージ。

MRIの場合はCTと違って、3方向から撮影することができるため、脳腫瘍などで場所や範囲をイメージしやすくなります。

医療者向け

CTよりも、更に多くの撮影方法があります。

撮影数に応じて時間が長くなるため、30分以上かかる場合もあります。不穏患者や小児の場合は、鎮静が必要になる場合もあります。

金具のある衣類や下着、入れ歯、ピアスなどの装飾も、必ず外して入室する必要があります。ポンプを使った持続静注がある場合は、撮影時に中止できるかどうか、担当医に確認が必要です。

クレジットカードを持ち込んでしまうと使えなくなるので、注意してください。

入れ墨やタトゥーがあると、MRIが禁忌というわけではありません。ただし皮膚のただれや、やけどを起こす可能性や報告がゼロではなく、撮影すべきかどうかは、状況と優先度によります。

かなり昔の外科手術(クリッピングなど)では、磁性体が使われていた時代もあります。しかし少なくともここ30年以内に手術を受けた方であれば、まずMRI撮影可能なもの(チタン製が使われていると考えてよいでしょう。

造影剤

仕様する造影剤は、「ガドリニウム造影剤」です。

造影CTと同じ理屈で、脳血液関門(blood brain barrior : BBB)が破綻している腫瘍には造影剤が取り込まれて増強し、正常脳組織には取り込まれないため、腫瘍だけが強調して映しだされます。

硬膜、下垂体、脈絡叢などは正常でも増強されます。

CTやDSAで使われる、ヨード造影剤と同様の副作用を生じる可能性がありますが、頻度は少ないと言われています。

造影CTのように、糖尿病の薬を事前に中止する必要はありません。

かなり稀ですが、高度の腎機能障害がある場合、造影剤の腎排泄が遅れて、腎性全身性線維症という重篤な合併症を生じることがあります。

もう少し詳しい情報

MRIの撮影方法も、造影まで含めると、かなり多彩です。いずれ別記事で記載していきます。

  • SPGR
  • ASL
  • SAS
  • 機能的MRI(functional MRI)
  • 頚動脈プラークMRI(black blood法)
  • MRI神経路描出(MR tractography)
  • vessel wall imaging
  • ダイナミックMRI
  • MRV
  • MR DSA
  • 神経メラニンMRI

基本画像以外にも、色々と有用な撮影が可能です。

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この記事を書いた人

地方中核病院の勤務医です。脳神経外科専門医を取得して十年ほど経過しました。
脳卒中や頭部外傷など、脳神経外科領域の一般的診療を主に行っています。

病状説明や学生講義で、どう話したら分かってもらえるかに苦心することが多く、「むずかしいことを、むずかしい言葉で説明しない」ことを目標にして書いています。

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